エウリアンの文脈商法
「きれいなものが部屋にあるといいですよね」
「この絵、凄く綺麗ですよね」
「この絵が部屋にあるといいですよね」
「それじゃあ、この絵を買いましょう。え!?買わない? だって、あなたはきれいなモノが好きなんでしょう!」
路上で無理矢理、絵はがきを押しつけてくるお姉さんについていくと上記のような体験ができます。
お姉さんが言っているのは次のようなことです。
- 綺麗な絵を買いましょう。
- きれいなものが好き。
- 綺麗な絵がある。
これらは、全てお姉さんが勝手に言っていることで、こちらには無関係なことです。
- あなたは、綺麗な絵を買いましょう。← なんで?
- あなたは、きれいなものが好き。← きれいなものが嫌いな人は少ないよ
- ここに、綺麗な絵がある。← それがどうした。
ところが、次のように並べると、この3つが強力な説得力を持っているように感じます。
- きれいなものが好きなこと。
- 綺麗な絵があること。
- 綺麗な絵を買わなければならない。
それは、人間の知覚処理プログラムが、以下のように言葉を補うからです。
- 私はきれいなものが好き。
- 私の前に綺麗な絵がある。
- 私は綺麗な絵を買わなければならない。
- なぜなら、私はきれいなものが好きだからだ。
他人から言われたことが、自分の意志にすりかわってしまっています。
人間は、相互に無関係な事柄でも、眼前に並べられると自動的に「何らかの関係を読み取ろう」とします。
それどころか、「何らかの関係を読み取れるように、適当な何かを付け足し」てしまいます。
これが『文脈効果』です。
人間の認知は、文脈・状況(コンテクスト)と関連づけられたことを強力に処理できるように進化しています。
それゆえか、相互に無関係な事柄にも文脈を探し出したり、勝手に文脈を作り出したり予測し、そこに無関係な事柄を当てはめて解釈してしまうような能力も発達してしまいました。
エウリアンのお姉さんは、文脈効果を利用して、絵を買うように仕向けているのです。
きれいなものが好きだからといって、綺麗なものを買う必要はありません。
きれいなものが好きだからといって、綺麗な絵を買うために金を出すのは別の話です。
文脈効果に惑わされないためにも、常に一度立ち止まって、本当にそれらは関係のある事柄なのか確認しましょう。